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2008.12.07 (Sun)

ベンチャー文化を興すためには。

「ベンチャー」という言葉を使うべきか、それとも「起業」という言葉を使うべきか、実際のビジネスにおいてその定義は大いに迷うことになるが、少なくとも社会経済構造がネクストステージにテイクオフするために必要なベース装置であることは共有している概念ではないだろうか。アメリカにおいては Fairchild Semiconductorが後のシリコンバレーを形作る基礎になったように、また日本においては坂本竜馬が作った亀山社中が後に大財閥・三菱へと成長したように、現在の社会経済構造はすべて「創業」からはじまる、と断言しても構わない。だが、ITバブル崩壊も含め、一部の起業成功者たちによる経済犯罪の多発や経済倫理への挑戦行動が、国民に起業を“虚像の創出”と認識させ、一時の熱狂を冷ましている傾向が存在することもまた事実だ。しかし、ベンチャーないし起業が社会のなかで揮わなければ、経済構造も効率化を果たせず、また新たな価値も創出できないものと私は確信している。なぜなら、一度混迷した90年代以前のアメリカ経済を再生させたのは他ならぬこの「ベンチャー」という社会的装置であったからだ。それは70年代初頭のキャピタルゲイン課税強化を受け「ベンチャー冬の時代」を経験した「失敗した起業家」たちが数多く存在し、社会全体が危機管理能力を高めていたからでもあるが、アメリカの産業史そのものといってよい半導体・コンピュータの発展とともに歩んできたミドルリスク・ハイリターンを実現するベンチャー文化(ニューエコノミー・パラダイムに煽り立てられた「根拠なき熱狂」ではなく)・支援制度の底力が一気に発揮された、と指摘できるからだ。スピードある新技術やサービスの開発や提供によって、需要を喚起しつつ供給構造の改革を一体的に行うことによって「イノベーションと需要の好循環」を果たす経済を構築していくためには、ベンチャー政策が必要になるわけだが、日本においてはその振興にどのような政策が展開されているのか先ずは概観してみたい。
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【More・・・】

日本のベンチャー政策が充分であるかといえば、決してそうではないだろう。産官学連携による大学発ベンチャーの設立が増加を見せはじめ、日本の高い技術研究に効率的な研究開発投資政策が展開されはじめたとはいえ、全産業的にいえば毎年度の開業率は常に廃業率を下回っており、経済構造の大きな変革に寄与していない。しかも、その開業率の水準は常にアメリカの1/4程度の規模にしかすぎず、新陳代謝の少ない経済文化を保持し続けている。ベンチャー政策の柱は1)法人設立制度の改革、2)資金調達支援制度の充実、3)人材確保支援制度の充実、4)技術開発支援制度の充実、の4点だと思う。サービス系ベンチャーと技術系ベンチャーはその求める起業環境に幾分の違いがあるとはいえ、それでも以上の4点は共通する必要政策・観点だろう。2006年の商法大改正・会社法制定によって日本の“会社制度文化”は大きな変化を見せた。以前から、最低資本金制度導入の頃よりからより柔軟に会社設立を果たすことのできる機会拡大が展開されてきたが、このベンチャー設立促進ともいえる制度改革が完全にスタート地点に立ったのが2006年だったと個人的には考えている。課題は多く残されているが、会社法によって(2005年2月の商法抜本改正に伴う「会社法制の現代化に関する要綱」決定が事実上のスタートではあるが)会社設立手続きの簡素化・迅速化、取締役会設置義務の緩和、最適資本金制度の撤廃(事実上の1円起業)、有限会社新規設立の停止、合同会社(日本版 Limited Liability Company)制度の設置、外国企業に対して株式交換による企業買収を可能にさせたこと、などの意義は大きい。資本金規制においては1000万円程度では債権者保護に役立っていないし、新規事業創出促進法による1円起業会社はすでに2万件を超えていたから、会社法の制定はまさに言葉通り「現代化」のための整備事業だったといえる。会計参与制度の制定や執行役員会の設置定義に関する整備、種類株式の整備も意味としては重要だが、ベンチャー制度という観点からみれば、やはりLLPやLLCが日本においても設置できることとなった意味が一番重要だ。まだ会社法自体が制定間もないものであるので、その内容をよく理解している経営者・起業家予備軍の数が十分であるとはいえないが、今後日本のベンチャーは法人種類としては必ず合同会社が主流になると確信している。世界的にみてもLLCという表記は通りがよいのと、定款自治の裁量が大きく機関設計が自由であるというのは、日本の会社制度文化の中で大きな変化であったものと思う。これを決して有限会社の代替物として認識してはならない。ただし残念であったのは、法人課税制度において、アメリカのように法人(LLC)から生ずる損益が構成員たる社員(一般にいう従業員のことではない)に直接配賦され、構成員たる社員は他の所得とあわせて納税申告ができるパス・スルー課税が認められなかったことだ。法人主体として認められながら、その課税をパス・スルーさせていくことは、日本に存在しなかった税文化かもしれないが、ベンチャー育成という意味では重要な政策提言だったと思う。今後の課題はこの制度整備にあるように思えてならない。

法人設立整備をみたが、経営の実務面でも大きな改革の流れが形成されはじめている。起業に関する人材支援というテーマでは、中央・地方政府(以下、統一して政府とする)にいずれも支援センターを開設しコーディネート事業を展開し、また起業家教育の充実により起業家を増やそうともしている。経営実務において重要なのは、基盤人材確保助成金のように給与経費の一部助成を認めているし、女性や高齢者には特別に創業経費の助成を行っている(個人的には、女性や高齢者だけでなく、なぜ青年男性層もこの枠に入らないのか、政策対象とならないのか不思議でたまらない)。またインターンシッププログラム事業の支援や労働者派遣法改正による労働者派遣の円滑化は、ベンチャーの雇用環境を著しく変化させた。税制面から考えてみると、何度も改正整備されているが、ストップオプション制度は、経営人材の確保という意味で大きな成果をあげている。技術開発支援政策に関しても、その制度整備は充実しはじめている。主に知的財産権や産官学連携の話題になるが、82年、アメリカにおいて制定されたSmall Business Innovation Research Program(連邦政府の研究開発予算の一部:現在2.5%を中小企業にふりむける制度)のように種々の中小企業技術革新関連制度が用意され、それと連動する形で知的財産権の流通・活用支援や産官学連携政策を展開した。大学発ベンチャーだけでなく、如何に大学研究機関で研究開発された技術や知識を実際のビジネスに活用できるようにさせ、国際競争力を高めるという国策の意味がここには隠されている。80年、アメリカにおいては、政府からの委託費で研究開発した大学において大学教官の特許取得を認めるバイ・ドール法が成立し、大学発ベンチャーが容易になった経緯があるが、日本もこの制度に類似した形で産業再生法を制定し、大学等技術移転促進法と共に国立大学教官などの民間企業役員兼業規制の緩和を果たすなど、研究者の裁量拡大に努めてきた。国立大学が独立した国立大学法人となった現在、この流れはますます強いものになるだろう。しかし、重要なことは知的財産権保護を強化した85年からのプロパテントの流れにしかり、アメリカのベンチャー政策は、イノベーションという段階的探索行為とスタートアップ企業の弱さ(信用力・営業力のなさ)という2つの性質をよくふまえて制度設計がなされているという本質を見逃してはならない。すべての政策に関しても多く指摘できることだが、日本の政策ベクトルに不足しがちな性格はこの点にあるのではないだろうか。

98年、01年に中小企業庁によって集計された「中小企業創造的活動実態調査」アンケートにおいて、日本の起業家たちは「創業時に困難すること」として、「自己資金不足」「創業資金の調達」「販売先の開拓」「仕入先の開拓」「人材の確保」「経営全般に必要な知識・ノウハウの習得」「開業に伴う各種手続き」などをあげている。また、今後「起業家増加に必要なこと」として、「資金調達を容易にする制度」「税制面での優遇措置」「政府系金融機関からの融資枠拡大」「学校での起業家精神獲得教育」「個人保証慣行の改善」などをあげている。これはおそらく“事実”であるというよりも、“真実”をついている。ロンドンビジネススクールとバプソンカレッジが中心に構成しているGlobal Entrepreneurship Monitorでは、日本の起業家度は、参加29ヶ国中アイルランドに次ぎ最低となっているし、International Institute for Management Developmentの調査によれば、日本人の恐怖の度合いは圧倒的に高く世界水準で、約60%が恐怖を感じているとしており、アメリカの約20%強を大きく上回っている。なぜ、アメリカなどは起業文化が旺盛かといえば、個人の課税制度や株式制度が日本と大きく異なるためでもあるが、政策面からいえば 78年に改正された連邦破産法の存在が大きい。この法で重要なのは、1)早期の倒産処理を認めることによって「黒字倒産」のリスクをできるだけ回避できるようにしていること、2)破産・倒産した場合に州裁判所の根拠により家宅は担保として没収されず、また家族の養育費が支給される、という点にある。アメリカが「再チャレンジできる国」として特徴づけられるのは、このような制度保護があって起業家が大胆に市場に参入できるからだ。また、リスクマネジメントの観点から「失敗を経験した者」が人材として重宝される傾向も存在する。アメリカの資本主義文化がすべて絶対に正しいわけではないと思うが、国民経済のあり方として日本も大いに参考にできる部分があるのは間違いないはずだ。

最後の観点として、資金調達支援制度を考えてみたい。日本の制度を概観すると、間接金融では、国民生活金融公庫やその他政府金融によって、低利子で新規開業支援融資や創業支援融資、新規事業開拓支援融資などが行われている。現在ではその融資の多くが無担保・無保証で行われている点が特徴であるといえよう(ただし、その融資実行率が妥当なものであるかは議論の余地が残る。もちろん、先ごろの新銀行東京の問題は論外ではあるが)。その他、保証能力が不足する経営者に対して、信用保証協会を通して債務保証をカバーしたり、新規事業開拓に関して補助・助成金を交付するなどしている。直接金融に関しては、中小企業基盤整備機構や中小企業投資育成株式会社による事業者に対する出資や、中小企業金融公庫や信用保証協会、各政府ベンチャー財団による債務引受・保証などが実行政策としてあげられる。また投資事業組合などへの出資にも足を踏み入れた。アメリカでは中小企業庁がベンチャーキャピタルファームに対して低利融資や出仕を行うSmall Business Investment Companyという制度があるが、このような公共資金を投資する制度は間接金融しろ、直接金融にしろ、公共政策のひとつとしてどのような国家にも存在する。民間調達市場の制度改革という側面では、よく指摘されるエンジェル税制の拡充を筆頭に未登録・未上場歌舞伎の流通促進、企業年金・証券投資信託の運用規制の緩和、ブックビルディング方式の導入やマザーズ、ナスダックジャパンなどの市場の創設をはじめとする株式市場の活性化、優先株式一般の発行可能化を成し遂げてきた。「公募」と「私募」の概念論争は未だ現存としているし、そのディスクロージャー制度論が問題にはなっているが、少なくとも“金融緩和”改革によって少人数私募債制度や匿名組合契約制度など、その資金調達ツールは以前よりも拡大化・流動化したのも事実だ。内部金融に関しては、役員借入金を株式転換・持分転換(定めはないが、違法ではない)する手法も多用されはじめている現実がある。しかし、これら多くの改革努力をしながら、なぜ日本のベンチャー文化・制度では資金調達制度が難しいと指摘されるのだろうか。経済産業省の調査によれば、各国内ベンチャー投資額の比較を行うと、アメリカと日本ではその額に30倍もの差があり、EUとの比較でさえ25倍に達する。これはストック、フローともにいえることだ。このような現状は、アメリカの場合は最も投資判断の困難なスタートアップ期の企業に対して、その資金を支えるミッションを意識したプロのエンジェルやそのネットワークが確実に存在するからであり、ベンチャーキャピタルが投資を行いにくいスタートアップ期のベンチャー企業へ投資を行うエンジェルを増やすことが日本のベンチャー政策に必要迫られている政策課題であるのではないだろうか。そのためには、リビングデッドの取り扱いを検討することも必要だが、アントレプレナーという意味を重要視するのならば、イギリス、フランス、台湾のように会社法人に対してはエンジェルの投資額の一部を所得税額控除にし、その枠を制度改革とともに広げていくことが必要であると思う(一定の財政基準以下の非営利組織に対してはその投資額の全部を所得税額から控除すべきだ)。一時的な税収入減少という事象にこだわらず、長期的な視野で社会全体・経済全体の付加価値を増進させるための前提として資金流動を円滑化させることが最も重要だと私は考える。

今後、どのような政局になるか予測することは難しいが、景気政策優先派の麻生太郎氏が内閣総理大臣として任期を全うされていけば、日本の経済政策は企業の資金政策に関しては個人の投資に関する減税と企業の設備投資促進政策を入り口として、景気浮揚を図る流れになるのではないだろうか。景気政策も財政再建もあい互いに争う内容ではなく、車の両輪のごとく同時に行わなければならないものであると思うが、減税と増税は対象選別によって両立しうる、と私は思う。今後、ベンチャー政策に必要なことを結論づけるならば、「最初に税制改革、最中に税制改革、最後に税制改革」、これが最大のポイントであると思う。もちろん、現実の起業経営としては登記可能なオフィスを安価に大量に政府が提供することと、会社法と齟齬をきたしている社会保険・厚生年金制度の運用を再整備することが先ずは必要だと考えるが、政府機能として果たさなければならない最大の仕事は、日本人が抱える莫大な貯蓄財産を市場に投資・流動化させることだ。そのポイントが税制改革だと思うのだ。少なくとも開廃業率が逆転しなくては、経済のテイクオフなど起こりようもない。税制とベンチャー・起業政策は“社会の映し鏡”ではないだろうか。重要なことは、この日本を『何度もチャレンジできる』国にすることなのだ。その理想実現に、アメリカ式も日本式も存在はしない。

現代の金融恐慌によって、直接金融そのものが否定されはじめている潮流になっているが、金融文化の本質をきちんと議論しなくては、その効用は評価できないのではないだろうか。もちろん、国内にあってその産業金融は間接金融であるべきだと思うが、起業においては直接金融の入り口をより低くしておかなければ、経済全体のテイクオフは起こらないのだと思う。どうだろうか?






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