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2008.02.19 (Tue)

近江八幡市民病院にみるPFI事業と政治決断

パブリックマーケット論の最終授業で話題にのぼったPFIによってつくられた近江八幡市の病院に対して興味がわいたので、この病院に関して文章をとめてみようかと考える。
契約期間が残っているのに、依頼者が受託者に対して突然一方的に契約を解除することは、常識としてはありえない。なぜなら、契約とは相互信頼の原則によって将来にわたる金銭の授受を保障するものであるからであり、相手側に余程の契約解除項目にふれる行為がないかぎり、これを解約するということはないからだ。
しかしながら、現実として市側と事業者側との契約解除の可能性が出てきた。
市政のトップである市長はなぜ「契約解除の可能性」という政治決断を示したのか。
PFIの事業性や近江八幡市の行政行為の経緯をおいながら考えていきたい。




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【More・・・】

この近江八幡市民病院の運営事業に対する市の契約解除通告に関する記事をインターネットで検索すると、昨年07年02月22日付けの毎日新聞に『近江八幡市総合医療センター 揺れるPFI方式経営 /滋賀』という記事が残っていた。詳細な記事は以下の通りである。



◇市長交代で解約も検討--最終的なツケ、市民に
 昨年10月、全国初の本格的なPFI(民間資金等を活用した社会資本整備)方式で開院した近江八幡市立総合医療センターが今、揺れている。病院事業管理者が辞職したうえ、産婦人科の医師不足。今月4日には、PFI事業の「あり方検討委員会」が設立され、市はPFIの契約も含めて病院経営を見直す。来年1月末には結論を出すが、解約となれば、莫大(ばくだい)な違約金が待ち受ける。前身の市民病院時代から親しんできた市民は「私たちの病院は一体どうなるの?」と固唾(かたず)をのんで見守っている。【斎藤和夫】
 ◆PFI導入の経緯◆
 旧市民病院の老朽化に伴い、前市長時代の01年3月、PFI事業の導入を決定。医療は市が担当し、建設や管理運営は委託先の特別目的会社「SPC」が担当する仕組み。市とSPCは30年間の契約を交わし、30年後に建物などが無償で市に引き渡される。従来の方式だと、建設や維持管理、関連サービスに30年間で750億円かかるが、PFIでは682億円で済み、68億円が節約できると試算された。
 最新設備のため、開院5年間は減価償却の出費がかさんで赤字が続くが、その後は黒字に転換するとされ、市議会も承認した。
 ◆市長の交代◆
 ところが、開院2カ月後にPFI事業に否定的な冨士谷英正市長が就任すると、混乱が続いた。前市長が公募で選定した病院事業管理者と意見が対立。同管理者は「PFI方式で現市長と意見が合わない」と今年3月、半年で辞職した。同時に採用された病院事務長も、4月に事務長職をはずされ、10月には市長部局へ異動させられた。元事務長は市公平委員会に「病院以外の異動には応じられない」と不服を申し立てた。また、前市長らが書いた新病院のガイドブックが発刊後、半年余りお蔵入りになっていたことも毎日新聞の報道で発覚した。
 ◆来年度は連結決算◆
 これらの問題が余震とすると、本震は「あり方検討委員会」。同市長は11月末、「新年度から病院事業も市と連結決算になる。多額の赤字が予想される病院を改革するため、有識者による『あり方検討委員会』を設置したい」と発表した。「病院の赤字は昨年度は3億円だが、今年度は24億円。このままでは(北海道)夕張市の二の舞になる。検討委ではPFIの解約も前提に議論をしてもらう」と明言した。99年のPFI法の成立後、全国的にPFI事業で解約のケースはなく、市長の発言は波紋を広げた。
 ◆批判続出の検討委◆
 同委は市長の諮問機関で、8人。市からは槙系(まきけい)・院長と正木仙治郎副市長の2人。外部委員は総務省公立病院改革懇談会の長隆(おさたかし)座長、全国自治体病院協議会の小山田恵会長ら6人で、外部委員はPFIに批判的な人が多い。
 第1回委員会では、「(病院事業を委託する)SPCの効率の悪さ」「契約の不透明さ」「センター内に医療行為を行う職員とSPCという二つの組織が存在して運営することの難しさ」などPFI批判が相次いだ。病院関係者では槙院長と須貝順子院長代行が意見を求められたが、2人も「SPCの物流管理は、ずさん」「最初にPFIありきで、職員は選択の余地がなかった」と批判した。
 一方、当初の試算の通り、開院当初は多額の減価償却費などのため、全体では赤字になるものの、医業収益自体は伸びていることは委員も認めている。
 ◆被害者は市民◆
 同委は初回で悪役に挙げられたSPCの関係者から第2回目に意見を聞く予定だ。しかし、私は公正な判断をするなら、中間派や推進派の意見も聞くべきだと思う。正木副市長は「PFIが正しいかどうかを議論するのが目的ではない」と言うが、PFIを止めるための委員会との印象が強い。民間業者であるSPCも首長が代わったからといって、方針転換されたら、たまらない。大きなトラブルもないのに、解約となれば、建設費の百数十億円は即刻支払わなければならないうえ、SPCの今後の利益も補償せねばならない。一般会計が約200億円の市予算では払い切れず、最終的に被害をこうむるのは市民だ。委員会には慎重な審議と公正な判断を望む。




そもそも公立病院というのは非常に建設費が高く、このコストを少しでも圧縮するために前市長の時代に決定されたのが、市民病院のPFI方式による再建設・運営というものだった。日本全国の公立病院の一床あたりの平均建設費は3300万円といわれ、民間病院の一床あたりの平均建設費はこの3分の1の1100万円だといわれる。この実態の中で財政事情の厳しい地方自治体として、コスト圧縮の手法として選択したのが今回のPFI事業であった。
近江八幡市が東近江地域の中核病院として重要な役割を果たしてきた市民病院を、今後の医療需要の高度化・多様化に対応するとともに、よりよい療養環境のもとで効率的な医療を提供できるよう移転、整備するための事業である。
事業主体は大林組1社の出資によるSPC(特別目的会社)PFI近江八幡株式会社(代表取締役・井谷守=株式会社大林組PFI推進部上席グループ長)。設計・監理を内藤建築事務所・大林組共同体、建設及び修繕を大林組、医療情報システムの開発・保守を日本電気、施設維持管理及び市の病院経営をサポートする病院内運営を各専門企業がそれぞれ担当した。
事業概要を整理すれば、以下の通りになる。



【事業概要】

1. 事業概要
〔事業類型〕BOT方式
〔運営維持管理期間〕平成18年10月~平成48年(30年間)
〔落札時期〕平成14年8月13日
〔SPC設立〕PFI近江八幡株式会社(平成15年7月9日設立)
〔SPC資本金〕5億円(大林組100%出資)
〔事業契約〕平成15年11月25日締結

2. 施設規模
〔敷地面積〕約56,000㎡
〔構造・規模〕鉄筋コンクリート造・免震構造・地上5階・塔屋1階
〔延床面積〕約33,000㎡
〔病床数〕407床
〔診療科目〕24科目(外来診療科18科、技術診療科6科)
〔駐車台数〕約800台(平面駐車場)
〔工事費〕約100億円
※ 施設構成の記載は除外する。

3. 事業スキーム図は株式会社大林組HP(http://www.obayashi.co.jp/solution/pfi/med.html)を見てください。




市側としてはこの市民病院の移転当初、最初の5年間ほどは減価償却のために赤字が続くがその後は黒字に転化し、成功事例として十分なものになると考えていた。
この市民病院を設立する前のPFI事業審査員のひとりでもあった栗原嘉一郎氏(筑波大学名誉教授・日本医療福祉建築協会元会長)などは、2003年3月に行われた社団法人日本医療福祉建築協会の第38回定期総会における記念講演会でデフレの効果もあると指摘するが、『近江八幡の場合も、当初見込みで8~11%程度の財政的負担減という予測の下にスタートしたわけですが、ふたを開けてみると、審査が終わった段階での計算で17.1%の減少と、予想をはるかに上回る結果が出ました。PFI万々歳という感じだろうと思います』『納税者の側からみると、これは税金が有効利用されることを意味する点で異論は出ないでしょう。サービスの受益者としてみても、PFIによって財政難の地域でも良質の公共サービスを受けることができる可能性が開ける点でこれは悪くないな、と評価されるだろうと思います』と絶賛していた。

この私立病院は前市長のときに、PFI方式の導入が決定され、市とSPCが30年間の契約を交わし、30年後に建物などが無償で市に引き渡されることとなった。従来の方式だと、建設や維持管理、関連サービスに30年間で750億円かかるが、PFIでは682億円で済み、68億円が節約できると試算されていた。最新設備のため、開院5年間は減価償却の出費がかさんで赤字が続くが、その後は黒字に転換するとされ、市議会も承認した。
ところが、開院2ヵ月後に冨士谷英正氏が新市長に就任するとこの事業をとりまく様相が一変する。現市長はPFI事業に否定的な人物であったからだ。その混乱を象徴するのが前市長によって構築されたPFI事業に関する人事への介入だ。公募で選出された病院事業管理者は市長と対立し、辞職。同時に採用された病院事務長も左遷された。
そして、今回の市長による事業者との契約を解除するという政治決断だ。
市長は「運営責任の全ては事業者にある」と断じる。

しかし、事業者に運営責任の全てが押し付けられるべきなのか。
PFI運営においては、まず自治体側が行政の自主方針を策定し、その中から特定事業を選んで、本当に財政の減少につながるか十分事前評価したあとでなければ、政治決断をしてはならないはずだ。そうであれば、事業責任は十分に市財政に関してマネージメントできなかった市の経営能力にあるのではないか。民間活力を活かせなかった責任を本当は問われなければならないのではないだろうか。
事業契約に関する条件規定書などを読んでみると、62ページ以降に『両者に帰責事由がない場合、法令変更又は不可抗力により、市が事業の継続が困難(市が事業契約の継続のために多大な費用を要すると判断した場合を含む。)又は不要と判断した場合、市は、事業者と協議の上、事業契約の全部を解約することができる』と書いてある。
たしかに、市財政に関しては破綻団体に転化する一歩前の状況である。

それは近江八幡市立病院の運営方式を見直す市長の諮問機関「あり方検討委員会」でも厳しく指摘されている。



小山田委員:・・・平成18年度は3億円の赤字、平成19年度は24億円の赤字が見込まれている。さらに、平成19年度には資金不足による一時借入金が8億円になると予想されている。この状況が続けば、当然ながら病院の経営はもとより、市の財政の破綻を招くことは明らかである。

東日本税理士法人(山村):・・・50億ぐらいの不良債務のようなものがあると、財政再生団体に指定されてしまう、とそういった状況になっています。
長委員:・・・三、四年後は財政再生団体入りがほぼ確実だということを事務局は言っているわけです。・・・財政再生団体になると、どういうことになるかというと、公共サービスはものすごく減るし、市職員の給料は3分の1ぐらいになるとか、夕張の例をみるとそうなっています。ほとんどの市職員が市を去っていくという状況ぐらい、下げざるを得ないという状況が目前に迫っているわけですから、ペナルティを払うとか、そんな能天気な話じゃないんですよ。PFIに違約金を払うとか何とかいう前に、国家管理になるということを言っているわけです。

小山田委員:・・・このままいけば、あと破綻の道しかなくなりますよね、計画が立てられないのであれば。

長委員:大変厳しいことを申し上げるけど、市はこのままいけば破綻なんです。今のような状況では支払いを続ければ市が破綻するんですよ。




しかし、この委員のひとりである正木副市長などは別機会で「PFIが正しいかどうかを議論するのが目的ではない」と発言しているが、この委員会は各委員の発言をたどっていると、どうしてもPFI否定派の集まりのような気がしてならない。政治は闘争であるから敗北したものに物を語る資格はないと思うが、事業者にとっては政治勢力が右から左に変わったからといって、大きなトラブルもないのに突然契約を解除されたらたまらないだろう。それ以上に企業も市民も政治に対して信頼を置くことができなくなる。
また同時に問題視された私立病院の検診センター従業員が検診料110万円を着服した事件は、事業者として謝罪・反省しなければならないだろう。しかし、それが事業者による運営に問題がある、と指摘される全てであろうか。

ここで、改めて再考したい。確かに当初の建設費計上の設定ミス、医師確保の困難(当初16人の医師増員をはかっていたが、4人しか増員できなかった)、収益の低調(収入見込みを当初は110億円としていた)があるだろうが、その中でもし事業者が責められるとしたら、建設費計上の設定ミスしかない。1床あたりの建設費が3,000万円だったこの市民病院は全国の公立病院の建設費に比べてもコストを圧縮できていないかもしれない。しかし、このようなデザイン(施設の要求性能書および業務要求水準書などをはじめとして)を最終的に決定したのは市だ(コンサルタントが入ったとしても)。事業者ではない。事業履行の確実性を信じたからこそ、市は事業者の選定を決断したはずだ。また経営主体も病院(といっても、市立病院に関する経営判断権は市にあり、院長にはなかったようでる)や市のはずであり、事業者ではない。どうしても、私は事業の責任を政治的に事業者に市が転嫁したいだけのような気がしてならない。もし、PFIを否定する形をとったとしても、病院経営の実情を全く理解せず、また病院間との協議もなし、また理解もなしに、収入よりも支出の多い形でのPFIの導入を図った市の責任だろう。
先述の社団法人日本医療福祉建築協会第38回定期総会において講演した栗原嘉一郎氏は発言している。
『経営・管理までSPCに出したら民営化そのものになりますから、これはありえない』

しかし、一方で市が財政危機に関して焦燥感を募らせる理由もわかる。
平成19年6月に国会で財政健全化法が成立した。この法律が司法自治体の経営を圧迫しているのは確かだ。この財政健全化法は、病院の財政数値と市の財政数値を合算した連結指標の作成が義務付けられ、その指標に財政再生団体転落となる基準値、いわばボーダーラインが設けられた。これによって、自治体病院の財政的信用力をもとに調達した借入金によって資金繰りが可能だったとしても、その金額の規模によっては市が財政再建団体に転落して、行政・政治的に破綻する危険が想定されるからだ。
この私立病院建設前に起こりえなかった(財政健全化法は成立していなかったため)危機意識が彼らの焦燥感を煽り立てているのだ。地元権益に関する勢力対立・政治闘争の観点をのぞけば、この危機に対する市長の意識はある方向性では正しい。

公立病院改革ガイドラインにもPFIや病院建築に関して「施設・設備整備費の抑制等」の記載がある。何度もいうが、あくまでも発注者は市側だ。経費を必要最小限度に抑制するための努力は市にあったのではないか。それは前市長の責任でもある。しかし、事業収益は短期的な観点では推し量れない。設立当初から中期的な赤字は市も認識していたはずだ。その行政判断を軸に事業者も事業運営にあたっている。事業契約書のなかには、業務の見直しも含まれ、柔軟に市と事業者が対応する、としている。たしかに、財政破綻を目の前にして危機感を募らせる現市長の考え方もわからないではないが、行政の一貫性・安定性を保つためにも「訴訟になってもやむを得ない」という態度を保つのではなく、事業者とともに十分な対策をお互いひざをあわせて議論をするべきではないだろうか。PFI反対派だからといって、賛成派と相争って市政を混乱させていることも市長としての仕事ではないように思う。PFI賛成派もまた反対派と同じ市民だ。

契約の信頼性やPFI事業の完結、という事業の意味以上に、行政の断続性をうまないために市長は幅広くステークホルダーの意見を聞くべきだ。
政治には「改革力」とともに「継続性」というものが求められるのだから。
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